契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「柚葉?」


黙ったままの私に優しい微笑を向けてくれる。


「気分が悪いんだろう?病院へ行こう」


琉聖さんの長い指が私の頬を撫でる。


「病院は……大丈夫です……休めば……」


「なら、今日はうちに泊まるんだ」


「え……」


「そんな様子ではお姉さんに心配かけるぞ?」


琉聖さんがそういうのも無理は無い。


一時間は経っているのに身体の震えは止まらず、泣いた顔は酷い顔で、誰が見てもおかしいと思える。


「大丈夫です」


「安心しろ、マンションの寝室はカギがかかる」


私の気持ちを和らげようと舌その言葉に私は首を横に振って少し微笑む。


「ありがとうございます でも、帰ります……」


「行こう」


琉聖さんに言われて立ち上がった。まだ全身が震えていてゆっくりとしか歩けない。それを見かねた琉聖さんが私を抱き上げた。


「琉聖さん……?」


「ちゃんと自宅に送り届ける」


会社には社長をはじめ、部長クラスが数人来ていると聞いた。だけど、会社を出る際に誰一人会わなかった。琉聖さんの配慮なのだろうか。


抱上げられたまま会社を出ると、琉聖さんの銀色の車が停まっていた。


******


琉聖さんは黙って車を運転している。今はその方がありがたかった。今は口を開くのも億劫だった。


私はシートの背にもたれて窓の外を見つめていた。

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