契約妻ですが、とろとろに愛されてます
あれ……?無い……カギが無い……。


私は玄関先でバッグの中に手を入れてゴソゴソとカギを探していた。


「どうした?」


隣にいる琉聖さんが聞いてくる。


琉聖さんは車から降りて玄関まで付き添ってくれていた。


「カギが……」


そうだ……今日は出掛ける時、慎が家にいたから部屋に忘れてきたんだ……。


「無いのか?」


琉聖さんの言葉に頷く。


「でも、……だいじょうぶ……です」


「大丈夫じゃないだろう?」


「すぐ……戻って……くるから」


なんだか口が上手く開かない……今にも意識を飛ばしてしまいそうだった。


脚に力が入らなくなりふらついてしまうと、琉聖さんに身体を支えられた。


「無理するな 一緒にマンションへ帰ろう――!」


不意に私の額に大きな掌を置いた後、琉聖さんが小さく舌打ちするのが聞こえた。


「琉聖さん……」


「熱がある マンションへ行くぞ」


気分が悪くて何も言えないけれど、有無を言わさない口調で琉聖さんは私を抱き上げ、一度助手席に座らされた。シートベルトを装着すると、運転席に戻って来た琉聖さんはマンションへ車を走らせた。

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