君のところへあと少し。

18

髪をおろした状態で、ナリに会ったことあったっけ?


トイレ前の鏡で髪を梳かす。


腰まで(無精して)伸ばした髪は、いつも時間かけて手入れしている。

自分のチャームポイントがないから、せめてこの艶艶の髪だけは、という想いからのこと。

暑い気もしたけど、頭が痛くなるのに比べたらマシ。


「お待たせ、ナリ。準備出来、、、?」

カウンターでコーヒーを飲んでいたナリの驚いた表情。

…どっかおかしい⁈私⁉


自分の事かと見回すが、ナリの驚いた顔はそのままだ。


「ナリ???」

「めっちゃ…可愛い…」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でナリが何かを呟いたが、聞こえない…事にする。



「ほら!早く行こっ!」


急かす様にして手をつなぐ。

恥ずかしくて死にそう。

可愛いって言ったよね?今。


「メシ何にしようかー?」

「安くて美味しいもの!牛丼とかー、お好み焼きとかー、」

店の戸締りを確認して、祭りに向かう波とは逆方向に歩き始める。


なんとなく。



うん、なんとなく。


どちらからともなく、手を繋いだ。



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