君のところへあと少し。

41

もう少しで終業、というタイミングで奏からメールがきた。

ー仕事終わったら、とりあえず俺に連絡。ハルのことで、日和がお前に話したいことがあるらしい。ー


なんだ?
まさか昨日のやりとりのこと、ハルが話したとか…?

一瞬どきりとしたが、とりあえず返事をしておく。

ー了解ー

奏から言われる事は過去に何度もあったから、いいのだが。
日和がハルのこと?


思いつかなくて気持ちが焦った。







「はぁ⁉マジで⁈」

夕方。ハルのアパートに寄る前に奏のマンションへと立ち寄る。

そこで日和から聞かされた事実。

「うん。不安だって。嘘じゃないと思うよ。」

嘘だろ…あいつ28だぞ?

28にもなってキスしたことがなかった?
未だバージンってどんだけだよ…。
つか、オレが初めて?
いやマジで⁇⁇


「お前さ、そういう気遣い出来そうにないよな。
今でその反応だし。先に耳に入れといてやったほうが余裕を持てるかという、俺の親心に感謝しろよ。」

そういう奏の頭を日和はぺちりと叩く。

「ハルちゃんの逃げ出したいって行動の裏はわかるよね?」

「わかる…。」

充分過ぎるほど理解した。

「でも、ナリくんが好きだから、どうしたらいいのかって悩んでた。そういうハルちゃんの前向きな気持ち、わたし好きなの。だから、奏に話してナリくんに伝えたの。」


28までとっといてくれた…。

オレの為じゃなかったと思う。
でも、今はオレの為。
昨日のキスを思い出したらヤバい。
あれも…初めて。


気合いが入る。

ていうか空回りしそうだ。
大切にしてやりたい。護ってやりたい。
課長みたいに何でも持ってるわけじゃない。
でもこの気持ちは誰にも負けない。

「てわけで、いってこいよ。ハイ。」

掌に押し付けられた小さな箱。


「………ばっ、馬鹿か!お前っ」

それはコンビニで目にする小さな箱のコンドーム。

「いや、大事だろうが。今からハルんち行くとなるとあいつは持ってないぞ?
だいたい、男側のマナーだろうが。」

…いや、ごもっとも。



「有難く頂戴」
「525円。」


プレゼントじゃねぇのかよ…。


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