君のところへあと少し。
(その11)波留と和也

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さっきナリからメールがきた。

今から行く。

それだけ。
晩御飯どうするのかな。
今日は海に行かなくていいのかな。
ドキドキの余り、余計な事ばかり考えてしまう。

シャワーもしたし、部屋も綺麗にした。

うん、大丈夫!


ピンポーン♪

チャイムと共に心臓がドッキーン‼


飛び上がりながらも玄関を開ける。

と。

「馬鹿!簡単に玄関開けてんじゃねぇよ‼」
頭をゴツん。


「いた…だってナリだってわかってるんだしー。」

ゲンコツを食らってしまった。
えへへ。

見慣れたスーツ姿のナリをうちに招き入れる。

初めて、かなぁ。
昨日ナリのうちも初めてだった。
そういやぁ奏のうちにも行ったことがない。
いつも集まるのは海音だったから。
プライベートを知ってるようで知らないのだ。


「へえ。なんか意外。」

部屋を見回し、ナリがそう呟いた。

「何が?」
「なんかお前、メルヘン好きな感じだったから、うちの中もそんな感じかと思ってた。意外とナチュラルな感じなんだな。」

…っていうか、ナリがここにいる事じたいが私には意外なんですが。

「メルヘンじゃないよ、あれ。この年でメルヘンとかドン引きじゃん。ナリ、私のこと子供みたいに思ってるでしょ。」


…。



沈黙は肯定。


いやもう、いいんだけど。
ーオレのモノになれー
その言葉だけでもう、幸せ。


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