君のところへあと少し。

43

「子供…とか思ってたら、こんな事しねぇよ。」


不意に声がして。
強く引き寄せられて腕の中にとじこめられて。

「ん…。」


キスの雨。

背中に腕を回すけど、手が届かない。
大きな背中。
筋肉質な胸板。
日焼けで真っ黒な肌。

「やべぇ。がっついてるわー、オレ。」

自嘲気味に言うと身体を離す。

なんか寂しい。

「うー。」
「なんだよ、ハル。」

…。
言ってもいいのかな。
ヒヨちゃんからは、して欲しい事とかはちゃんと言わなきゃダメって教わったけど…。

「もっと…。」
「は?」
「キス、、、したい。」


今の聞こえたかな。


と、思った瞬間。

背中が折れちゃうんじゃないかってくらい、きつく抱きしめられた。

「煽るな、バカ!」
「ば…バカって言うひとの方がバカなんですー‼」
「どんだけ可愛いんだよ、お前!」
「はい⁉」

ふわりと抱き上げられた。

またしても片腕で。

「軽いな、お前は。小さいし。壊しそうだ。」

「え?」
「今日は我慢なんかしてやらねぇぞ。逃げるのも無し。オレのモノになれ。いいよな?」



至近距離のナリに言われて。
獰猛なライオンに狙われたウサギ。
鋭い爪で獲物を離さない鷹。
どうにもこうにも、甘い雰囲気と隣り合わせに緊迫した雰囲気も漂わせたふたりだった。





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