君のところへあと少し。

7

「あいつんちさ、父親が社長やってんだ。いいとこのボンボン。趣味ってやらせたバイオリンがなぜかあいつには合ってて、今に至るわけだけどさ。
この前、オヤジさんに久しぶりに会ったんだよ。
やたらと彼女はいるのか、とか聞いてくるからもしかしたら、縁談話持ちかけられてるのかもしんねぇ。
オレには話してくれなかったけど…なんか変わった様子なかったか?」


…あり過ぎます。

これだ、と合点がいく。

「ほら、ヒヨちゃん。裏があったでしょ。」

「ハルちゃん、あたし頑張る。」


オンナ2人がウンウン頷きあっていて、ナリはわけがわからなかった。

まぁいいか。
後でハルに聞けば。

「ハル、いって来る。」
「気を付けてね、怪我しない様に。」

ハルの頬にキスをおとし、ナリは裏口から海へと降りる。


「やだもう、新婚さんじゃん。ハルちゃんの方が妊娠早かったりしてー。」

「それはないよ!ちゃんと避妊してくれてるもん!」


お互い照れ笑いだ。

「でもナリから和也、に変わったんだ?」
「うん、そう呼べよって。」

えへへ、と幸せそうなハル。
小さな身体で仕事も恋も頑張ってて。
いつも応援したくなるよ。

「奏は?また何処か仕事?」
「今はヘルプで楽団。コンマス代役だって。」
「追っかけいるらしいね。」
「みたい。わかるけど。」
「ハルこそナリくんの元カノ大丈夫なの?」
「和也がちゃんとしてくれてるよ。」


悩みは尽きないオンナの話。


ナリが海から戻ってきた時も、まだ2人は話し込んでいた。


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