君のところへあと少し。
(その13)奏と日和

6

「…ってわけ。どう思う?ハルちゃん。」


「うーん、奏って割と策士なんだよ。何かを考えての行動だろうね。でもいいじゃん、ヒヨちゃん。結婚しよう、でしょ。」

ハルの店でコーヒーを飲みながら、先日の出来事を相談していた。

「嬉しかったよ?奏の奥さんになる、って夢みてたし。でもさぁ…。奥さんになるのと避妊しないのって違わない?」

あの明け方の行為。
避妊しない、と前戯もへったくれもなく、奏は日和と繋がり日和の中へ精を迸らせた。

何かを焦ってる?
何を考えてるの?

「それは正論だけどね。でも裏がある、絶対。何かあるから順番が逆になったんじゃない?奏って仕事に出てしまうとわからないことだらけじゃん?」

「うん…」

「信じてあげて、奏のこと。」

ハルに諭され、確かに、と思う。
策士、というか準備万端というか、用意周到というか、奏は行き当たりばったりが出来る性格ではなかった。

だから、何かおかしいと感じた訳だけど。


「あーもう、悩むのやめた!妊娠してもいいもん!奏の子供だしね、可愛いと決まってる。それよりー、ハルちゃん、お肌ツヤツヤよー、話しなさいよー!」


お互いコイバナは楽しいものだ。

最近では突っ込んだ話が出来るようになったから、日和は楽しくて仕方ない。

「ねねっ、ナリくんてさ、どんな感じなの?見た目からいうとグイグイ押すタイプに見えるけどー。」

真っ赤になってハルは答える。

「誰かと比べられないからどんなって言われてもわかんないよー。」

「いやもう、体力バカだって奏が言うから色んな体位とかしてそうとか話しててね、」

「するか、バカ。」


いつの間にか、日和の後ろにナリが立っていた。

「あれ?スーツじゃないんだね。」
「今はオレが夏季休暇。店の手伝いしてるよ。」


はぁはぁなるほど。

要は離れたくないってワケだ。

「あれ、和也海に行くんじゃなかったの?」
確かに、ビーサンはいてるし、短パンの下にはウエットスーツ着てる。

「あー、日和が来てるのわかったから、ちょっと。」

「なに?何かあるの?」

不安そうな顔をしたのは、日和よりハル。

「日和、お前奏からあいつの実家の話きいたことあるか?」


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