君のところへあと少し。

15

意地っ張りは誰に似たのか。

日和にさみしい思いをさせてるなんて考えもしなかったから、彼女から向けられた浮気の疑惑に苛立った。

俺だって毎日でも日和を抱きたい。

でも毎日遅いし、日和だって仕事をしてるんだから仕方ない。
我慢。


そう思っていた。

ところが。

「赤ちゃん産めないあたしに用がないならそう言ってよ!」


まさかの発言。

青天の霹靂。

え?なんで?

そう思ってたら日和がうちを飛び出していた。

我慢してたのは俺だけだったはず。
日和が我慢?
淋しかった?

じゃあなんで言わないんだ?


…って、じゃあ俺もなんで日和に言わなかった?

お前が欲しいって。
赤ちゃんができなくても、抱きたいって。

そこまで考えて初めてお互いがお互いを思いやるが故のすれ違いだということに気づいた。





日和はあっけなく見つかった。

初めて俺たちが出会った、ハルの店…は閉まってるから、多分海岸。


そう思ったら、居た。

膝を抱えて座り込む、日和。

愛しさがあふれてとまらなかった。

今ここで抱いたら、絶対妊娠するな、って感じた。
だから迷わなかった。

何度も何度も日和の中に自分の昂りを穿って、何度も何度も中を満たした。

隠すものも何もない、月に見られてのセックス。

お互いの深いとこまでたどり着く感覚。


気を失うように眠りこんだ日和を抱き上げ、夜道をゆっくりと歩いて帰った。



翌日。

初めて仮病を使い会社を休んだ。
日和と居たかったから。


恥ずかしかった、と日和は言ったけど、「今までで1番感じた」とも話してくれた。
誤解を招くようなことは一切なかったけど、淋しい思いをさせたから、その日は一日中日和を抱いた。

忙しくてどうにもできないかもしれないけど。

俺はいつだってお前の側にいるから。

だから、寂しい時はそう言って。
抱いて欲しいときは誘って。


そう話して、何度も日和をイカせた。



3ヶ月後。


日和が頬を染めて検査薬を見せてくれた。
ハッキリと浮かんだ陽性のライン。


俺の、俺達の子供。


宝物が増えた瞬間。


バイオリンを捨ててまで日和を選んで本当によかった、と思った。

日和と俺達の子供。宝物が減るどころか増えたのだから。



愛してるよ、日和。


これまでも、これからも。

「nobody can go back. anybody can start now. 」

ふたりで、未来を作ろう。




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