東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
中尉殿はマントルピースの上の飾り棚に置かれた舶来の花瓶に手を掛けた。



私は慌てて腰を上げて、彼に近づいた。



「貴方のしようとしてる事は盗人です!」

彼は手を引っ込めて、私の腰に両手を伸ばす。



「…盗人とは…酷いな…貴様の口は本当に俺を苛々させる…」



「んんっ…」



グイッと引き寄せられてそのまま…唇を重ねて来た。


私の腰元に彼の提げた軍刀の柄が当たる。



「やっ…」


私は彼の胸板を渾身の力で叩く。



私の抗議は虚しく、彼に唇を堪能させてしまった。



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