東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
二人を見送り、定子さんと応接間に入った。



「…私の話とは?」


「…貴方は華族出身のご令嬢だけど…これからが御堂家の嫁です。中尊寺家とは違います。御堂家の色に染まって頂きます」



「それは重々承知しています」



「…では…早速…ここの窓拭きをして頂こうかしら?」



「えっ?」



定子さんは硝子の窓を指さした。



「…私が窓拭きですか?」



「…嫁なんて使用人同然よ…それに貴方は持参金なしに嫁入りした没落華族の令嬢でしょ?」



「・・・」


定子さんに辛辣な言葉を浴びせられ、涙が溢れそうになった。


< 75 / 300 >

この作品をシェア

pagetop