東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「椿さん…窓拭きは終わったかしら?」



定子さんが応接間に戻って来た。



「清史さん貴方は寝てなきゃいけないでしょ?」



「母上…兄上の嫁の椿さんにどうして使用人のような真似をさせるのですか?」


「御堂家の嫁としての務めを教えてるだけよ」



「…僕には母上が椿さんの身分に嫉妬して苛めてるようにしか見えないけど」



「き、清史さんっ!?母である私に向かって何て無礼な口の利き方をするの?」



「…僕を産んでくれた母親なら…もっと丈夫な身体で産んで欲しかったよ」



清史さんは冷淡に吐き捨てて、ソファーを立つ。



呆然と佇む定子さんの脇を通り過ぎて行った。


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