東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
食堂にて、成宮と昼食を共にする。


話題は巡行警護の一色。



「…帝様の暗殺予告以前に…港で女性の変死体が発見されたようだ。警察はその事実を伏せているが…古来から帝国に居る『妖(アヤカシ)』の仕業だと断定し、『陰陽庁』の特別任務隊が動いてるらしい」



「特務が動いてるのか?」



周囲をけん制し、小さな声で話す成宮の話に心の底から驚いた。



1925年、制定された『国家治安維持法』の下、法的に厳しく言論、思想の自由を取り締まる『特別高等警察』に似た組織が帝様の御下に存在した。


それが『陰陽庁』
普段は呪術的な儀式、全国の寺や仏閣の管理を取り仕切る組織で、全員陰陽師で構成されている。


陰陽の力を使い、見えない敵、異形の者と戦う組織が『特別任務隊』


前者を『特高』…後者は『特務』と呼ばれていた。





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