嘘と微熱と甘い罠

さっきの会話を聞いていて。

なんだか自信がなくなってきた。

今まで疑うなんてことなかったのは。

同じ会社で働いていて。

忙しいのを自分の目で見て知っているから。

だけど。

笠原さん本人が浮気肯定の考えを持っているとしたら…。





「…考えたくもない…」





ハァァァァァ、と。

体の奥から出てきたため息に項垂れる。





私はこの先、笠原さんを信じていられるのだろうか。

残業だ、出張だという言葉を。

今までのように「仕方ないよ、仕事だもん」と。

素直に思えるのだろうか。





自分がしてしまったことだからこそ。

笠原さんにもその可能性がないわけじゃないと改めて知ってしまった。





大して飲んでいないのに気分が重い。

でもそろそろ戻らなきゃ。

ハァ、とため息を吐くと。

私は個室にかかっていた鍵に手を伸ばした。



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