君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】





体調を崩したのか、俺の担当ナースだって朝言ってた
左近って奴に連れられて帰ってきた暗い女は、
自分でベッドに移動することも出来ずに、
看護師によって抱えられてベッドに横になる。




すぐに別の看護師が、トレーに点滴らしきものを持って
病室に飛び込んでくる。



「宗成先生の指示で持ってきました。
 後で、病室に顔を出すそうです」



そうやって、点滴を左近さんに手渡すと、
手慣れた手技で、細い今にも折れそうな腕に針を入れた。



「少し今の心電図見せて貰うわよ」



今度はそんな言葉が聞こえて、
騒がしくなる、もう一つのベッド。



「理佳ちゃん、
 詳しい説明は宗成先生の診察の後ね。
 
 暫く、休んでいなさい」

 

すぐに向こう側のカーテンが閉じられて、
アイツの、息苦しそうな呼吸だけが病室に木霊してた。






二人きりになった病室。


カーテンの向こう側に眠っているであろうアイツは、
今も苦しそうな呼吸のままで。





親父、何してんだよ。
早く来てやれよ。







なかなか病室に姿を見せない
親父に苛立ちながらも、
気になって仕方がない時間が流れ続けた。





親父がようやく姿を見せた後、
一際、慌ただしくなって、その後は何事もなかったかのように
静まり返る。




病室に響くのは、アイツの心臓が動いているのを告げる
機械の音だけだった。








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