君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
大丈夫。
どれだけ罪深くても、
私はまだ前を向くことが出来るから。
何時か私自身が許される日まで。
お遊戯室から再び、車椅子で移動している最中
廊下の壁に、貼りだされている絵が視界に停まる。
私が入院してる、この附属病院には3つの学校と、
幼稚園から大学院までの勉強が受けられるようになってる。
そしてこの病院にも、傘下にある学校の生徒たちの作品を
期間限定で飾られることがあった。
その中の一枚。
真っ白な羽根をキャンパスいっぱいに広げた
天使の絵が視界に停まる。
「あっ」
思わずその絵の前から離れたくなくて、
足置きに乗せていた足を地面へとおろした。
「どうしたの?理佳ちゃん。
まぁ、綺麗な絵ね。
神前悧羅学院 海神(わたつみ)校 中等部二学年 喜多川百花。
付属学校の生徒さんの絵ね。
理佳ちゃんの知ってる人?」
そんな風に言いながら、
かおりさんは私に付き合ってくれた。
初めてみたモモの絵のなかに居た天使は、
凄く優しくて……暖かかった。
「かおりさん、お願いがあるんです。
今度、この絵を一枚写真撮って貰っていいですか?
私……携帯もカメラも持ってないから」
「えぇ、いいわよ。
理佳ちゃん、この絵がそんなにも気にいったの?
そうね、この絵の天使は本当に優しそうね」
「後、五分だけ。
この絵の前に居てもいいですか?
なんか……メロディーが浮かびそうな気がする」
「えぇ、この絵の前にいる理佳ちゃんはとても幸せそうだから
もう少し居てもいいわよ。
私、先に他の患者さんの検査オーダーだけ手続きして迎えに来るわね」
そう言うと、かおりさんは仕事へと戻っていく。
車椅子に座ったまま、壁に飾ったモモの絵を見つめながら
私の脳内には、メロディーがゆっくりと紡がれていく。
モモ……、元気で過ごしてるんだね。