君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「理佳ちゃん、お待たせ。
ごめんなさいね」
再び私のところまで来てくれた、かおりさんの手には携帯電話。
かおりさんはその絵の前に私の車椅子を配置して、
一緒にカシャリと撮影する。
パジャマ姿の私が、
モモの絵と一緒におさまった一枚の写真。
その後は、モモの絵だけをパシャリと撮影して
すぐに売店でプリント。
宝物が出来た瞬間だった。
そんな宝物を病室の引き出しに忍ばせる。
その日、モモの絵の成果もあったのか
調子がよかった私は、午後からの15分のミニコンサートも無事に行うことが出来た。
今日……演奏したのは、
まだ曲名も何も決まってない、モモの絵を見て思いついた即興メロディー。
そして、ディズニーの有名な曲。
ミッキーマウス・マーチを使って、ひと時の遊びの時間。
メインフレーズは、ミッキーマウス・マーチなんだけど
そこに、ショパンとモーツァルトのピアノの練習曲の一部を抜粋して組み込んで
ショパン風のミッキーマウス・マーチと、モーツァルト風のミッキーマウス・マーチを
作り上げていく。
子供達でも知ってるミッキーマウス・マーチを使ってるのと、
ピアノを演奏してる子だと、すぐに反応出来てしまう有名な練習曲の一部を抜粋して
遊んでいるから、会計待ちの退屈な子供たちが集まってくる。
そうやって皆が集まってきたところで、最後に演奏する曲を考えてた時
宗成先生の姿が見えた。
「間に合ったな。
理佳ちゃん、今日こそは約束のショパンの夜想曲を頼むぞ」
リクエストする先生に「しょーがないなー」なんて生意気な言葉を返すと、
私はゆっくりと、夜想曲のメロディーをエントランスに響かせた。
お辞儀を終えると、
いつも聴きに来てくれる常連の人からは
「お嬢ちゃん、元気になったんだね。
ここ二回ほど、お嬢ちゃんの演奏がなくて寂しかったんだよ」
なんて私を気遣う言葉をくれた。
「理佳ちゃんは、こんなにもファンがいるんだな」
宗成先生が茶化すように告げる。
「今日は有難うございました」
そう言ってお辞儀をすると、
ピアノの椅子からゆっくりと車椅子へと移動する。
拍手に包まれながら、宗成先生に車椅子を押して貰って
病室へと向かった。
病室に戻ると、すでにリハビリが終わったらしい託実くんが
疲れたのかお昼寝してた。
宗成先生は私をベッドまで送り届けると、
託実くんの体に掛布団を掛けて、
お父さんな一面を見せて慌ただしく仕事へと戻っていった
ベッドの中に体を沈めながら、裕先生からの手紙の入った封筒を手に取る。
真っ白いに紙にプリントされた文字。