唇が、覚えてるから

一人で悶々としていると


「今度、デートしよう」


突然祐樹が言った。


「デ、デート!?」


声がひっくり返ってしまった。


デートって、その。

恋人同士がするお出かけのことだよね……?

私の知識では、そう。


「嫌ならいいけど」

「ううんっ!嫌じゃないっ!するするっ!」


取り消されたら困るし、力を入れて言ったらものすごく笑われた。


「じゃあ、しよう」

「………うん」


バクバクバクバク……

心臓は鳴りっぱなし。


どういう心境の変化……?

デートって、どこ行くんだろう……。


映画……?遊園地……?

高校生がしそうなデートを頭に思い描いていると。


「琴羽の地元に行ってみたい」


突拍子もない提案にまた驚いた。
< 133 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop