唇が、覚えてるから

少し拗ねたように言った。

それは本当。

合コンに祐樹が来るかもしれないと思って、この服を選んだんだから。


「え?いまなんて?」


目を丸くする祐樹。

そんな表情をしてるということは、きっと聞こえていたはず。


「何度も言わせないでよっ。恥ずかしいんだから」


私は火照る顔を見られたくなくて俯いた。

今日は下ろした髪の毛が、私の顔を隠す。


好きってバレバレかもしれない。

でも本当のことだし。

自然にアピールしてもいいよね……?


……でも男の子は鈍いっていうし。

祐樹は気づかないかな。


祐樹の恋愛経験はどうなんだろう。

今はいなくても、過去に彼女はいたんだろうか。

これだけのルックスだし、居ないほうがおかしいか。

もしかして、本当は今もいたりする……?

だから合コンの必要性もないの……?

じゃあ、私とこうして会ってる理由はなに……?


いろんなことは聞いたのに、肝心なことは聞けないまま。
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