唇が、覚えてるから
「なんか電波わりーなー」
スマホを振ったり空に向けてみたりする祐樹。
本気で泊りモードに入った祐樹は、泊る場所を探し始め。
言葉の撤回も認めてもらえなさそうだし、私もどうにか考える。
「そうだっ!じゃあ私の実家に行けばいいよっ……」
ここからだったら20分もあれば行ける。
名案だ!と私は提案したけれど、
「なに警戒してんの?」
手を止めて、少し笑いながら私を見下ろす祐樹。
「えっ、警戒なんてっ……」
「琴羽の両親に、初対面で泊めてもらおうなんて、そんな図々しい男じゃないよ」
「大丈夫だよ!気にしないで」
男の子と現れたら、お母さんもお父さんもびっくりするだろうけど。
「嫌だ。琴羽の実家に行くことがあるとしら、それは……
……いいから行こう」
少し表情を固くして、私の手をきつく握り直すと、祐樹はバス停に向かって歩き出した。