唇が、覚えてるから

***


「……わりぃ、結局こんなとこで……」


怪しげな照明、派手な装飾。

キングサイズのベッドに、室内から丸見えのバスタブ……。


「……しょうがないよ。こんなド田舎にビジネスホテルなんかもないし……」


ここは……。

ラブホテル。


だから実家にしようって言ったのに。

そもそも、無理に泊まらなくたって良かったのに。


あんなに強気で『帰さない』と言ってたくせに、いざここしか泊まるところがないとなった途端、祐樹は『帰ろうか』なんて言い出して。

それはそれですごく困ってしまった。

帰ったところで門限を過ぎるのは確定だから、寮にはもう入れない。


『俺は帰るから琴羽は実家に泊まれ』


なんて話にもなったから、


『ここでいいよ!』


私が思い切って、このホテルのルームナンバーを押したのだ。
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