唇が、覚えてるから

次の日は、小さな遊園地に行った。

都会に比べたら規模は小さいけれど、小学生のころはお母さんとお父さんによく連れて行ってもらった子供には夢のような場所。

私にゆかりのある場所は行きつくしたし、海はもう行った……となれば、他に行くところがなかったのだ。


どれだけ遊ぶ場所がないんだろう。

少し歩けばコンビニに当たるようなところに住んでいると、こういうとき何をしたらいいのか分からなくなる。

昔は、こんな田舎でも、あれだけ遊びに不自由しなかったはずなのに。

なに不自由のない暮らしは、工夫したり創造する力を阻むのかもしれない……。



「ここ結構面白くね?田舎の遊園地もバカに出来ないな」


その言いぐさが完全にバカにしてるけど……。

それでも祐樹は結構楽しそうだった。



忘れていたけれど、帰りだって3時間かかるわけで……。

すっかり遊び疲れた私達は、帰りの電車では、折り重なるようにして眠ってしまった。
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