唇が、覚えてるから
第4章
胸騒ぎ
「二日間歩きっぱなしで疲れたでしょ」
「俺の体力なめんなよ」
祐樹はそう言うけど。
……電車の中で爆睡してたくせに。
先に目が覚めた私は、祐樹の寝顔を飽きもせずずっと見ていた。
断ったのに、祐樹は寮まで送ると言ってくれた。
こういうの、思いっきりデートって感じがする。嬉しい。
そして別れ際にキス……なんてね。
これでも乙女の端くれだから、そういう憧れは持っている。
考えただけでも、体が熱くなってきた。
二つの足音。
街灯下に伸びる二つ並んだ影。
ふと、一つの疑問が生まれる。
祐樹は……私のことをどう思っているんだろう。
私は好きだと伝えたのに、返事をもらっていない。