唇が、覚えてるから

……ただ。

祐樹の存在を証明できる人がいるとすれば。

それは中山さん。

考えてみれば、中山さんは息子さんが今でも毎日自分に会いに来ていると言っていた。

……中山さんの息子さんは、祐樹……。

誰もが幻覚であると言い、私だってそれを承知の上で中山さんの話に付き合っていた。

でも、絶対に祐樹はいたんだ。

中山さんには、本当に祐樹が見えていたんだ。


それが嘘じゃないと、今の私なら心の底から信じることが出来る。


今の私なら分かる。


……それを受け入れてもらえない、辛さも……。
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