唇が、覚えてるから
「これで……俺も安心して逝けるな……」
私を見つめる祐樹は、私を通り越してその先を見ているように見えて。
「やだよ。祐樹……やだよ、行かないでよ、祐樹……」
声が震えて、体が震えた。
祐樹は一瞬顔を強張らせたあと、ふっと優しく頬をあげて。
私の頬を両手でそっと包んだ。
「琴羽……。言っただろ?俺はあの時死ぬ人間だったんだ。命乞いして、チャンスをもらっただけ。だから、もう俺がここにいるわけにはいかないんだ」
「どうして……」
「それが定めだから…。目的を果たしたら、定めに従わなきゃいけない。背いたら、俺は成仏も出来ずにこの世を彷徨うだけになる」
「それでもいいからこの世界に居てっ!」
「困ったやつだな。俺を本当の幽霊にしたいのか?」
「幽霊の祐樹でもいいからずっとそばにいたい!」
……お願いっ……。