唇が、覚えてるから
「少し話そうぜ」
そう言われ、先に歩き出した祐樹の後を追いかける。
ドキドキと高鳴る胸と共に……。
着いたのは、病院敷地内にある中庭。
昼間は患者さん達が散歩したり軽い運動をしたりする場所だけど、今は夕食の時間。
誰もいなくて静かな中庭は、昼間とはまったく別の装い。
暑かった昼間が嘘みたいなくらい、涼しい風が吹いていた。
「本当に高校生なんだな」
制服姿の私を、まじまじと見る祐樹。
「え?」
改めて横に並ぶと、彼はすごく背が高いことに気づいた。
私だって小さい方じゃないのに、それでも頭一つ飛びぬけてる。
180センチくらいはありそう。
制服同士で今日は等身大の私達。
なんだか照れくさい。
「実は本物の看護師に見えてた?」
照れ隠しにそう言うと、
「人一倍危険な看護師にな」
ものすごく失礼なことを言う祐樹。