唇が、覚えてるから

「……ありがと。今日もお見舞い?」

「ん。まぁな」

「そっ…か……」


いつもの気力がなくて、そのあとの会話も続かない。

久々に会ったっていうのに……。


受け取ったサイダーの缶からは、水滴がポタポタ零れ落ち続けるだけ。


「らしくないじゃん。良かったら話し聞くけど?」


プシュ。

祐樹が自分のサイダーの缶を開ける。

はじけた炭酸のしぶきが、私の顔まで飛んだ。


「……脳腫瘍?」


私の持っている本を祐樹が覗きこむ。


───ズキン。

この言葉を聞くだけでも、今はキリキリと胸が痛む。

私、重症だな。


「……うん。脳神経外科に移ってね。今度の担当患者さんなの……」


ポツリ、ポツリ。

中山さんのことを話した。
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