お父さんの彼女なんかに取られてたまるかっ!!(仮)
「あ。誰か降りてきた」
ロールスロイスから一人の男性が現れ、こっちに向かって歩いて来る。
黒髪のオールバックに、開いてるかどうかわからないぐらいの細い目に口ひげ。体型はかなり痩せているなぁ。だから、黒いタキシードみたいなのをスラリと着こなしてる。
その人は私の前に着くなり、穏やかな笑みを浮かべてから口を開いた。
「はじめまして、咲華様」
「は!? さ、咲華様ぁ!?」
なにそれー! 『様』だなんて、店員さんぐらいにしか呼ばれたことないよー!
「私は、伊勢崎家の執事を勤めております、里田(さとだ)と申します。今年で50才でございます。どうぞ、よろしくお願い致します」
これもまた丁寧に、手を胸に当てて一礼をしてきた。
「はぁ。さ、里田……様?」
「いえ、私に対しては『様』じゃなくて結構です。普通に呼んで下さい」
「そう……ですか? じゃあ、里田さん……」
ロールスロイスに執事って……真矢って、どんだけお嬢なの?
その真矢と目が合うと、またもや「んふっ」と微笑んできた。
もう、なにがなんだか……。