紙ヒコーキとアオイくん
あたしが袴姿の彼と初めてこの場所で会話をしてから、10日ほどが経つ。

あたしは毎日のように、弓道場へ通ってアオイくんと言葉を交わしていた。

……とは言っても、だいたいが浅はかなあたしの言動を彼がバッサリ鋭い態度でいなしてくるだけなんだけど。


仮にも年上の威厳? 何それおいしいの?



「あーあ、またテストかあ。やだな~」



ぶつくさつぶやきながら、こてんと後ろにひっくり返った。

反動でちょっとスカートのすそが捲れ上がったけど、気にしない。

そして斜め後ろにいるアオイくんもまったく気にしていない様子で、小さく首をかしげた。



「この学校にいる生徒でも、勉強嫌いな人っているんですね」

「……あのねアオイくん。前々から思ってたんだけど、一応県内でも有数の進学校と言われるこの学校にも、あたしみたいなフツーの生徒はいるのよ」



後ろにひっくり返ったその状態のまま、あたしはさらに頭を反らして彼と視線を合わせる。

上下逆さまになったアオイくんは、やっぱり無表情。
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