紙ヒコーキとアオイくん
「……俺の家は、春日先輩の家とは真逆で。昔から、両親が教育熱心でした。父さんは医者で、母さんは、今は専業主婦ですけど元々大手企業の社長令嬢で……ふたりとも、プライドが高い人なんです」

「………」

「他に兄弟もいないから、ふたりの期待はただ俺ひとりへと向けられていました。……勉強は1番じゃなきゃだめ、スポーツも1番じゃなきゃだめ、習い事も1番じゃなきゃだめ」

「………」



あたしはアオイくんの話を邪魔しないよう、ただ無言で、あまり感情を含まない彼の声に耳を傾ける。

彼はどこかつまらなさそうに、ふっと目をとじた。



「俺は最初、その両親の期待に応えようと、一生懸命がんばりました。友達と遊ぶこともせず、習い事以外の、家にいるときはひたすら勉強をして……テストでいい点を取れば、両親はよろこんでくれたから。運動会なんかで結果を出すと、あの人たちはほめてくれたから」



けど、と、アオイくんは伏せていたまぶたを開ける。



「それが当たり前になってくると、少しでも点数や順位が下がっただけで、激しく糾弾されるんですよ。……どうしたんだ、おまえならもっとやれるはずだ、こんな点数取ってどうするつもりだ、もっとがんばれがんばれがんばれ、って」

「………」
 
「……俺はもうがんばってた。両親の期待に応えようと必死だった。けどそんなのは評価してもらえずに、ただ結果だけを求められる。……で、中2のある日、とうとうキレちゃったんですよね」



あっさりそう言って、彼は目の前に広がる空を仰いだ。

つられてあたしも、彼と同じ空を見上げる。

あの日のように、白い飛行機雲が青空を切り裂いていた。
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