小形寄生物
 信彰が言った章一(しょういち)と言うのは俺の名前だ。因(ちなみ)に名字は紀久(きのく)という。あまり聞かない名字だろう?
「誰だ?」
 携帯が俺に問う。
 携帯と信彰は初対面であった。
「友達の信彰」
 軽く説明する俺。
「初めまして」
 携帯が深々と挨拶をした。 実際、お辞儀をしたのかと言えばしていない。ただ、声音が俺と話している時とは違って聞こえた。案に相違して礼儀正しいことに俺は知らされた。
 抑(そもそも)、この携帯は何なのかと詳説すると「有り得ないだろ」とか「お前、頭可笑しいだろ」と言った批判を俺は浴びるであろう。然し、事実だから拠所無い。

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