小形寄生物
そのことに気付いたのは、信影の家に遊びに行った中学二年の夏であった。
その日は三伏の候で、降り注ぐ太陽光が俺の思考を鈍らせていた。
「このテレビ動かなくなったんだよね」
遊んでいる時、信影は不意にもテレビに触れながら俺に言った。
信影が触れているテレビが壊れたテレビだと俺は直ぐに悟った。信影はその黒い箱の主電源を何度も押してみせたが、テレビは何も言わないで黒い画面のままであった。
「ふ~ん」
俺はそれほど興味がなかったから、生返事をして試しにそのテレビに触れて、どこが悪いか見てみた。
「……これまで宙に浮いた年金は……」
テレビは「ぶぅん」と産声のような音を上げて、椅子に座っているスーツ姿の男性を映し出した。
スーツ姿の男性は原稿を読み上げている。
「章一。どうやって、テレビを動かしたんだ?」
信彰は興奮気味に尋ねてきたが、そのことについて一番聞きたかったのは俺自身であった。
主電源を押した訳でもないのに、何故俺が触るだけで、テレビが起動したのか。だが、その時はまだ『そのこと』を『紛れ』と俺は認識し否定した。
それから一週間も経たないうちに俺はごみ捨て場に足を運んだ。
その日は三伏の候で、降り注ぐ太陽光が俺の思考を鈍らせていた。
「このテレビ動かなくなったんだよね」
遊んでいる時、信影は不意にもテレビに触れながら俺に言った。
信影が触れているテレビが壊れたテレビだと俺は直ぐに悟った。信影はその黒い箱の主電源を何度も押してみせたが、テレビは何も言わないで黒い画面のままであった。
「ふ~ん」
俺はそれほど興味がなかったから、生返事をして試しにそのテレビに触れて、どこが悪いか見てみた。
「……これまで宙に浮いた年金は……」
テレビは「ぶぅん」と産声のような音を上げて、椅子に座っているスーツ姿の男性を映し出した。
スーツ姿の男性は原稿を読み上げている。
「章一。どうやって、テレビを動かしたんだ?」
信彰は興奮気味に尋ねてきたが、そのことについて一番聞きたかったのは俺自身であった。
主電源を押した訳でもないのに、何故俺が触るだけで、テレビが起動したのか。だが、その時はまだ『そのこと』を『紛れ』と俺は認識し否定した。
それから一週間も経たないうちに俺はごみ捨て場に足を運んだ。