Only One──君は特別な人──
竜くんは全くあたしに気付いていない。

彼女しか見ていないのが一目瞭然。

あたしなんてすぐに背格好で分かったのに。


「──もえ? どうしたの?」


立ち止まっていたあたしに由美子が声をかけた。


「ごめん。帰るね。急にお酒の酔いが回ってきたみたいで、気持ち悪くて」


それだけ言うと、クルッと背を向けると、公園を逃げるようにして飛び出していた。


ボロボロと涙が溢れてきた。

どうして、竜くんがあの公園にいるの?

本命の彼女と手を繋いでいた姿が鮮明に浮かんでくる。


ぴゅううう。

冷たい北風が吹き抜けていく。

更に胸が苦しくなる。
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