砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
それはまるで全面降伏のようだった。

負け知らずのクアルン王が、ドゥルジとひとまとめに呼ばれる下っ端の悪魔に弱みを晒している。

ドゥルジはありえない勝利に気をよくして言い返した。


「手ぶらじゃ行けないわ。なんたってあたしの役目は、罪人の死体を地獄に運ぶことなんだからぁ」


そう言った瞬間、ドゥルジの身体はふわりと宙に浮いた。


「ならばスワイドを連れて行けばよかろう! 奴は紛れもなく罪人だ!」


サクルはシャムシールの剣先を砂に突き刺し、ドゥルジに向かって叫ぶ。その行為は、サクルの内から反撃の意思すら消え失せて見えた。


その間にも黒い髪はどんどん伸び、やがてひとつに固まると太い錐(きり)のような形を作る。


「それもいいけどぉ……罪人なら目の前にいるじゃないの。――何人もの同属を殺した狂王が! お前の死体も地獄に運んでやるわ!」


サクルが息を止めた瞬間――黒く巨大な錐が矢のように放たれ、彼の腹部を貫いた!



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