砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
サクルは覆いかぶさり、リーンに唇に軽く舌をなぞらせる。


「お前の中を知るのはこの私だけだ。ほら……わかるであろう? すっかり、私の形に馴染んでいる」


それは思いがけないほど優しく柔らかい声だった。

リーンの耳もとでささやきながら、ゆっくりと腰を突き上げた。内部に愛する人を感じ、恐怖から一転して安堵の喜びにリーンの心は解放された。


「あっ……やぁ、サクルさま……わたし、わたし、ああぁっ!」


これまでになく、サクルは緩慢な動きを繰り返した。

焦れたリーンは自ら彼の腰に脚を絡みつける。


(もし夢だったら、どうすればいいの? お願い、夢なら一生覚めないで。どうか……サクルさまに抱かれたまま死ねますように……)


自分の中にあるサクルはいつもと変わりない。

リーンの身体がほとんど抵抗も感じず受け入れたのは、彼の言うとおり馴染んだモノを押し込まれたからだと思いたい。


「サクルさま……一生に一度でいいのです。これで死んでしまうかもしれないから……ただ一度だけお聞かせください」


リーンは溺れ行く者のように、サクルの身体にしがみ付いた。

今宵のサクルは夢の中で思い描いた恋人のように優しく感じる。「罰だ」と言いながら、リーンを抱きしめる腕は壊れ物に触れるようだった。


「愛していると……わたしに、ただ一度でいいので愛の言葉をお与えください。……お願いします……」


こめかみに熱いものが流れ落ちた。


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