砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
(ふい打ちには不覚を取ったが……あの快感が忘れがたいものだったな)


快感に引きずられるように性急に突き上げ、すぐさま放ってしまった。だが今回は、できうる限り悦びを長引かせたい。


「……はい。サクルさまに、愛していると言っていただけたので……わたし、嬉しくて……」


暗がりに一輪の花が綻んだ。

それはサクルが結婚してからずっと望んでいた、憂いのないリーンの笑顔。


「そんなことでお前が笑うならいくらでも言ってやろう。愛している、リーン」


リーンの身体に熱が走り、サクルに伝わる。彼を奥へ奥へと誘う熱にすぐにも降参してしまいそうだ。

「ああ、リーン……お前の身体は不思議だ。なんという甘美な責め苦を私に与えるんだ」

「そ、そのようなこと、わたしにはわからないのですが」


欲情に火照り、涙に潤んだ瞳でリーンはみつめている。

その責め苦に何度でも身体を浸したい。サクルは甘い誘惑に駆られ、ふたたび口にした。


「無意識で私を虜にする……お前は愛しい妻だ、リーン」


たちまちリーンの呼吸が荒くなり――そこからは、あっという間だった。サクルの躰は急激な締め上げに悲鳴を上げた。


「サクルさま、サクルさまっ……愛して、ます。愛して……あ、ああっ」


愛の言葉はサクルの心にも暖かな火を灯す。

直後、火の玉のように弾け飛び、我を忘れる快感に引きずり込まれるサクルだった。


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