愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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「それは……いったい、どういうことか……よく」


産まれたのは女の子と教えてもらい、おめでとうございます、と言われた直後のこと。

太一郎が口を挟む間もなく、医者は緊迫した表情で言葉を繋げた。


「母子ともに危険な状態が続いています。お子さんはどうにか取り出しましたが……新生児仮死状態でした」


奈那子の症状は非常に重いものだった。

子宮はカチカチになり、胎盤の剥離面は三割以上に及んでいたという。もしこれが自宅で起こり、救急車で運ばれて来たなら……おそらく子供はすでに死亡していただろう、と医者は告げた。


子供は三十五週目で二千グラムに少し足りない。取り出した直後は自発呼吸ができず、気道を吸引して呼吸を補助した。それで産声を上げることができたのだ。

しかし、その後も弱く不規則な呼吸が続き……。

娘は保育器に入れられ、すぐさまNICU――新生児特定集中治療室――に運ばれたのだった。


一方、奈那子は……。


「現在経過をみている段階です。このまま出血が止まればよいのですが……。止まらない場合は、奥様の安全を第一に考え、子宮の全摘出という可能性もあります」


その言葉に、太一郎は愕然とするだけだった。


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