あの時とこれからの日常
「そういう海斗は、女を語る資格がないよ」

いつだって余裕をかましているのは、海斗なのだから

だから、

「だからさ、たまには本気になってくれてもいいじゃない」

たまには本気で焦ってくれてもいい

ヤキモチを焼いてくれてもいいじゃないか

「何度も言うけど、振り回されるわけにはいかないんだよ」

これ以上

「振り回してないもん」

「うそつけ」

一体何度しるふに寄ってくる男を叩き落としたことか

一体どれだけあの瞳に勝てなかったことか

一体いつからこんなにしるふの存在が大きくなったのか

「今日だって看護師とか患者さんとかに黄色い声を浴びせられてたの、海斗じゃん」

ふりまわされてるのは、こっちよ

園田の前では気にしてない顔をしていたけれど、やっぱりいい気はしないものだ

苦しくない、けれどしっかりと存在を感じられる力加減で抱きしめてくれている腕に

そっと手を添える

「そうだっけか」

「そうだよ」
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