あの時とこれからの日常
覚えてない、とつぶやき海斗に

「海斗、いつか絶対誰かに刺されるよ」

「そんな不確定要素より、今現在の姫君の機嫌の方が重要だろう」

「……ばか」

なんでこういう時にそういうこと言うかな

「お互い様だろ」

「……たぶんさ、」

さらりと答えた海斗に、ゆっくりと言葉を紡ぐ

「私が海斗から離れて行くなんて、出来ないんだよ」

確証も確信もない

でも、心がそう告げている

「そんなこと知ってる」

言葉とともに海斗腕が離れて行く

その腕に名残惜しさを感じたのは一瞬で、肩を引かれて向かい合わせになったときには、

見下ろしてくる漆黒の瞳が温もりをくれる

「だとしても、」

大きな手が、優しく、頭、頬、と移っていく

「自分の女が、他のやつに口説かれてるところを見ていい気はしないだろう」

真っ直ぐに見つめられて紡がれた言葉

うれしさと気恥ずかしさから頷きながらうつむくと

それを追う様にかがんだ海斗と唇が重なる
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