あの時とこれからの日常
たとえ毎回同じ回答が帰って来ようとも

「まあ、そこそこに」

でも、確実に副医院長に就任した2年前よりは楽になった

「そう?じゃあ、楽しい?」

しるふの質問に海斗が一瞬驚いたような顔をする

それはすぐに穏やかな瞳に変わる

「ああ」

「…そっか。じゃあ、いいや」

海斗が、医療界という世界に絶望を覚えていないならそれでいい

ずっとずっと黒崎先生には闘っていて欲しいと思うから

「しるふは?」

一度祈に視線を注いで、その柔らかな髪をさらりとひとなでしながら海斗が問う

「ん?楽しいよ」

そういって優しく微笑みながらしるふも祈を撫でる

あの居心地の良かった生活を抜け出すのは勇気のいることだった

あの頃よりもさらにお互いを思いやらないといけない

忘れそうになる小さな小さな想いを掴み取っていかなければならない

それでも、

「毎日毎日祈は新しいことを仕出かすし、朝灯も一日でどんどん大きくなるもん」

それを見ているのが楽しい

あの頃にはなかった楽しさだ

「そっか」

ならいい

海斗の言葉が暖かな部屋に消えていく
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