あの時とこれからの日常
以前は二人で囲んでいた食卓も今では3人

そのうち4人になるはずだ

変わることを人間は躊躇するものだけれど、その先でもこうやって笑っていられるなら

あの一歩を踏み出してよかったな、と思う


食事を終えて、遊び疲れたのか、海斗の体温に心地よくなったのか

胡坐をかいた膝の中で爆睡し始めた祈片手に紅茶を飲んでいると、しるふがその横に腰かける

さらさらと指を通り抜ける髪は、海斗譲りの漆黒

祈を見つめる二人の瞳は、いつになく穏やかだ

「ねえ」

口を開いたのはしるふ

祈から視線を上げると、しるふのブラウンの瞳が海斗を捕える

今回は邪魔されずに済みそうだ

「仕事、大変?」

黒崎病院副医院長夫人はベールに包まれた姫君との呼び方がささやかれるほどに海斗は、

しるふを副医院長業務に関わらせない

たまに「あのタヌキおやじめ…」とつぶやくことはあってもどういう取引をしているのかしるふは全く知らない

海斗が、しるふが真っ白でいることを望むならしるふも自ら首を突っ込もうとは思わない

だけど、それでも支えてあげたいと思っていることには変わりない
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