あの時とこれからの日常

「黒崎せんせ」

昼時

売店に売っている黒酢をすする海斗に神宮寺医局長が近寄ってくる

「お疲れ様です」

日当たりのいい廊下の手すりに軽く寄りかかりながら少し頭を下げる

「お疲れ様」

海斗の隣に自分も寄りかかりふと笑みを宿す

こうして神宮寺と肩を並べる機会もめっきり減ってしまった

今でも暇があればERを手伝ってはいるが、その時間は決して長くはない

「立花先生は、お元気?」

「ええ、元気ですよ」

相変わらずの不器用さとともに

顔色一つ変えずそう告げる海斗に神宮寺が笑う

「物持ちいいのねー、あなたたちは」

「医局長に言われたくはないですけど」

未だに独身を貫いている彼女に勝るものはないだろう