あの時とこれからの日常

「私も言ってから思ったわ」

ははは、と快活に笑いながら同意を示す神宮寺

「まあ、医局長を相手にするとか相当な自意識過剰な奴か逆にただのバカか、どちらかだと思いますよ」

「あら、遠回しな誉め言葉ねー、黒崎先生」

「俺でも医局長に手を出すとか無理ですからね」

そう言ってふと立ちあがる海斗の横で

「黒崎先生には立花先生がいるもの。私がどうのっていうより、あの姫君を泣かせることができないだけでしょう?」

と、一番触れてほしくないところに触れてくる

「…医局長には一生敵わないと思います」

ふ、と息をついてから、じゃ、と背を向ける海斗

「ちゃんと休憩取りなさいよー、副医院長さん」

口調はおどけて、けれど真面目な雰囲気を漂わせる神宮寺の言葉に足を止め、

一拍後に振り返る

「その泣かせたくない姫の勅命で今日は早く帰らないといけないんですよ」

海斗の言葉に、神宮寺が一瞬目を見張った後、そう、と優しく微笑む

相変わらず、あの瞳には敵わないらしい