あの時とこれからの日常
「ただいま」

キッチンで夕食の準備をしていたら思った以上に早くドアが開いた

「おかえり。早いね」

少しの驚きとともに、テーブルへ向かう海斗を視線で追う

「まあな。結婚記念日くらい早く帰ってくるさ」

「気が付いてたの」

これはさすがに驚いた

海斗のことだからこちらが言わない限り気がつかないと思っていた

カバンを椅子の上に置いて、しるふの隣で水道をひねる海斗を見上げる

「いい加減その失礼な認識を改めてほしいんだけど」

「だって、去年自分の誕生日忘れてたじゃん」

え、ああ、今日か、なんてぼけた海斗が記憶に新しい

「この歳になって自分の誕生日なんて祝う理由が分からない」

それに

「しるふと祈と朝灯の誕生日は忘れたことはない」

「つまり、海斗は自分の誕生日は覚える必要ないものって振り分けた訳ね」

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