あの時とこれからの日常
次の日、食堂にて

例の内科の佐藤君に話しかけられた日当たりと眺めのいい特等席で一人昼食をとっていると

「お疲れ」

頭上からかかった声とともに、断りもなしに隣にトレイが置かれた

「お疲れ様です」

ああ、でも断りがないってそれだけ身近ってことか

と玄米ご飯を頬張りながら一人思う

ふと見上げると新緑の青々とした葉が、日の光に照らされてきらきらと光っている

一年前、ここで食事をしていた海斗の隣に座ったのがきっかけで

それ以来しるふにとってお気に入りの席になった

さしも自分で見つけたような顔をしていたけれど、実はそうじゃない

「黒崎先生」

流れる沈黙が、いつか穏やかな時になればいいな、なんて思う

呼びかけると透き通った漆黒の瞳だけが向けられる

「今日って何時に上がりますか」

良かったら食事でもどうかなって

ついでにいうと食事に誘うことももっとスマートに言えたらなって思う

「今日、は悪い。裂傷患者を診てないと」

「そう、ですか」

そう言えば午前中に裂傷患者が運ばれてきて無菌室に入ってたっけ
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