あの時とこれからの日常
「だからかー、海斗が珍しくちゃんと対応していたのは」

納得したしるふは、にこにこと海斗の肩にもたれかかる

現金なもんだ

「珍しくは余計」

雑誌に視線を戻した海斗がぼそっとつぶやく

「えー、珍しくだよ。患者でもない、海斗のことを黒崎病院跡取りと知ってて寄ってくる女の子に海斗は、笑顔は見せない」

当たってるでしょ?

「当たってる、な」

「ほら。しるふちゃんそこらへん鋭いですから」

得意げなしるふに、ふと小さく笑みを漏らして

「じゃあ、そこら辺だけじゃなく、あそこらへんも鋭くなれないか」

「あそこらへんて」

「今日くらいは息抜きしても大丈夫かと思いきや、きっちり口説かれやがって。しかも帰り際」

この小悪魔が

「あれはさ、海斗が横やり入れなくてもちゃんと断れたもん。おかげで来週は、静かに目立たないように過ごさなきゃいけなくなったじゃん」

どうしてくれるのさ

「芽はできるだけ小さいうちに摘んでおくに限る」

誰のお陰でいつも平凡に過ごせていると思って

「何よ。海斗そんなにいつも頑張ってる?」
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