キミの空になりたい
エアコンの効いた講義室を出ると、むあっとした熱い空気に包まれる。
夕方の日差しも厳しそうだなと思いながら、私は下駄箱へと向かっていた。
「藤波、ちょうどよかった」
階段を降りようとしたところで、後ろから来た先生に呼び止められる。
ちょうどよかったって、何よ?
振り返ると、先生は持っていた書類袋を私に差し出した。
「すまないが、これを野球部の顧問の田口先生に渡してくれないか?」
「……はい」
「ありがとう。じゃ、これはお礼」
先生は持っていたジュースの缶を私に差し出す。
それは、購買の冷蔵庫で売っている、ミックスジュースだった。