キミの空になりたい
「涌井君、バイバイ」
黒板を掃除する彼の背中に向かって、何気なく言ってみた。
すると涌井君は掃除をしていた手を止めて、こちらを振り返った。
「藤波さん、また明日」
軽い会釈をしながら、涌井君は応えてくれた。
私の名前を知っていてくれたんだ……。
そう思ったら、自然と笑みがこぼれる。
私は手を振ると、補習授業をやっている講義室へと向かった。
「じゃあ、今日の補習はここまで」
補習担当の先生がそう言って、講義室を出て行った。
帰りの支度をして私は席を立つ。
予想していた通り、補習授業に来た生徒は10人にも満たなかった。
中には欠席して受けられなかった人もいたわけだし。
純粋に不合格だったのは私くらいかもしれない。