キミの空になりたい


活動期間の長い野球部がうらやましいなって、思う。


私はフェンスに手をかけて、野球部員の表情を見つめていた。


暑いはずなのに、どの人も真剣な表情を崩さず、練習に打ち込んでいる。



「涌井ー!そろそろいいぞ!」


「はいっ!」



その時、声が響いた。


涌井という名を耳にして、私はそちらを向く。


グラブを手にした涌井君がマウンドに向かって走っていくのが目に入った。


制服でもなく、体育のジャージでもない。


白い上下の練習着。


黒いベルトに黒のアンダーシャツ。



初めて見る、涌井君の別の姿。


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