キミの空になりたい
さっき、声をかけた時に見せてくれた柔らかい表情はどこにもない。
前方のキャッチャーを真剣なまなざしで見つめている。
そして、大きく振りかぶるとキャッチャーへとボールを投げた。
ズバアアンッという音がして、キャッチャーミットに綺麗におさまる。
ボールを受けたキャッチャーは立ち上がって、涌井君へとボールを戻した。
涌井君は一呼吸を置いて、再び大きく振りかぶってまたキャッチャーへと投げる。
ズバアアンッという音がするたび、私の心が大きく揺さぶられる。
ただ投球練習を繰り返しているだけなのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう?
まっすぐと前を見つめる真剣な表情。
汗をぬぐい、時々、空を見上げる仕草。
太陽に照らされて、全てがキラキラと輝いて見える。